皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
建国祭の日は予想以上に大勢の来城者が訪れたせいか、怪我や体調不良者が多かった。

幸い、重病者はおらず夕方以降は街中で行われる建国パレードを見物に行く人が増えたせいか、皇城内の人の数は減っていた。


「キラナ、今日はありがとう。後は大丈夫だからせめてお祭りを楽しんでおいで」


舞踏会に間に合わずすまないねと言って、トルン医師は私の手から薬品を取り上げる。


「え……でも、私はまだ」


「もう十分だよ。アンが今、来ているんだ。キラナに会いたがっていたから、少し顔を見せに院長室に行ってくれないか」


治療院の院長であるトルン医師には、執務を行うための広めの個室が与えられており、仮眠もできるようになっている。

カナック伯爵夫人に会うのは久し振りだ。

これまでも何度も自宅に遊びに来て欲しいとお誘いいただいていたし、私もお会いしたい。

優しいお願いにうなずき、甘えさせてもらった。

エプロンを外し、簡単に髪を整え、魔法が作用しているのをサッと確認する。

夫人を警戒する必要はないが、皇城内は身分関係なく大勢の人が出入りしている。

高位貴族の方々に出くわす可能性もあり、気は抜けない。

父は私がメリハ族の末裔であることを帝国に報告していなかった。

申告して、意に染まぬ治癒を強いられるなど自由が奪われるのを恐れていたからだ。

実家の件もあり、私が政治的に利用されないように願っていたと母から聞いた記憶がある。
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