皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
執務室を訪れれば、満面の笑みでカナック伯爵夫人が迎えてくれた。


「お久しぶりにお目にかかります、カナック伯爵夫人。本日は……」


「キラナ、堅苦しい挨拶は不要だっていつも言っているでしょ。アンおば様って呼んでちょうだい。本当に久しぶりね、全然来てくれないから、会いに来たの」


アンおば様はおっとりした雰囲気のトルン医師とは正反対の快活さあふれる、貴族にしては珍しく歯に衣着せぬ物言いをする女性だ。


「キラナ、今日は手伝いをありがとう。舞踏会に間に合わせてって言ったのにあの人ったら。ごめんなさいね、せめて今日のお礼に受け取ってちょうだい」


すぐにカナック家の侍女頭が素敵な淡いピンク色のドレスを運んでくる。


「いいえ、舞踏会は元々参加予定ではなかったですし、仕事ですから。それにそんな高価なドレスはいただけません」


「親友の大切な忘れ形見の成長を見守って着飾るのは、私の生きがいなの。ほら着替えてみて」


巧みな話術と切なそうな表情に押し切られ、促されるままドレスを受け取って奥の部屋で着替える。

侍女頭の手伝いを断り、髪とメイクだけお願いした。

痣はリボンで隠す。


「よく似合っているわ。リラにも見せてあげたかった」


ドレス姿の私を夫人が寂しそうに微笑んで見つめる。
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