皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
日が落ちて、空がゆっくりと濃い藍色に染まっていく。

早めに着替えて帰宅しようと庭園内から執務室までの近道を選択し、ドレスの裾が破れないようにたくし上げる。

おば様が目にしたら卒倒する光景だろうが、人目もないので気にせずにいる。

少し木々の生い茂った、庭園内を横切る庭師がよく使う裏道だ。

皇城勤めになり、仲良くなった高齢の庭師に教えてもらった道だが、急いでいるときにはとても便利で普段からよく利用している。


「誰かっ……!」


大きな樹木が生い茂る場所付近を通りかかったところで、女性の切羽詰まった声が聞こえた。

慌てて薄闇の中、目をこらせば少し離れた樹木の根元付近にひとりの女性が蹲っているのが見えた。


「どうかされましたか?」


そっと声をかけて、近づく。

女性のいる場所は表の道に近い場所のため、外灯の光が届いている。

相手が同性らしき声で安心したのか、蹲った焦げ茶色の髪の女性が顔を上げて返答する。


「急いでいて木の根元に足を引っかけて転んでしまって……左足首が痛くて」


よく見れば薄い青色のドレスの裾が破けて泥が滲んでいる。

身につけている高価なドレスやアクセサリー、話し方から貴族の女性だと思った。
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