皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「公式な場ではないし、かしこまらなくていい。頭を上げてくれ。エリーの処置が必要だな。まずはここから移動しよう」


「エリーはこのまま抱えて連れて行くよ。治療院はここからさほど遠くないだろ」


思案する彼に、プラント公爵令息が妹を横抱きにしながら答える。

歩みを速める公爵令息に、妹は反論していたが、そのまま連れられて行った。

ふたりの姿が見えなくなった瞬間、トゥーイッラ魔術騎士団長が私に厳しい視線を向けた。


「今夜の出来事は他言無用で頼む。親友の妹によからぬ噂が立つのは避けたい」


周囲の空気にまじり、まるで威圧するかのような魔力に反応し、私の体内の魔力が勝手に引き出される。

同時に右手首の痣が強く痛んだ。

以前、砦で経験したものと似たような感覚に、慌てて自身の魔力をコントロールしようとしたが、痛みのせいかうまくいかない。

思わずリボンの巻かれた右手首を左手で押さえ、地面に膝をついた途端、顔の横に落ちてきた髪の色に目を見開く。


「銀の髪……まさか」


掠れた低い声が耳元近くで響いた途端、私の顎が骨張った指先に掬い上げられる。

至近距離に迫る端整な面差しに目を見開く。

紫色の真剣な眼差しから目をそらせない。


「……紫と琥珀の目、間違いない。あの砦で俺を治療したのは君だな……やっと会えた」 
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