皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
3.氷の求婚
カツンカツンと皇城の長い廊下に靴音が響く。

かぶせられたマント越しでも感じる、周囲の視線が痛くて怖い。

反射的にきつく目を閉じマントの裾を強く握りしめる。

あの後、氷のような求婚に目を見張り、言葉を失った私に、彼は冷たく告げた。


『今後について話し合いたい。移動しよう』


状況をいまだのみこめず、座り込んだままの私の顎から指を離す。

立ち上がって通信魔具を取り出し、幾つかの連絡をしていた。

その間、彼の表情、事務的な口調はまったく崩れない。

容貌が整いすぎているせいか、こんな状況でも変わらない態度が少々怖くなる。

連絡を終えた彼が私を見下ろし、綺麗に整えられた眉根を寄せる。

冷え冷えした視線から今後の自分がどうなるのかわからず、握りしめた指先が冷たくなっていく。

なんでこんな事態になったのか。 

せめてトルン医師やアンおば様に連絡できればと考えて、すぐにその思いつきを打ち消す。

これ以上私の問題に巻き込むわけにはいかない。

私の素性をトルン医師が庇い隠してきたなどと知れたら伯爵家が危ない。

これまでずっと助けられてきたのだ。

迷惑をかけないようにしなければ。

このまま、どこかへ逃げればいいのだろうか。

逡巡しながら力の入らない足を叱咤してなんとか立ち上がろうとした瞬間、全身がふわりと温かな感触に包まれ、体が浮き上がった。
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