皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
マントの下から広い部屋の様子を観察する。

どうやらここは彼の執務室のようだ。

部屋の一番奥に大量の書類が置かれた重厚な飴色の執務机、その手前には豪奢な応接セットがある。

彼は部屋を横切り、隣室に続く扉を開けた。

そこには大きめのカウチソファと小ぶりな机、書架が置いてあった。

彼は私を慎重に扉近くのカウチソファの上に下ろし、マントを取って、私の右手首を持ち上げる。


「痛むか?」


痣の近くに触れた指先が思いのほか優しくて、一瞬反応が遅れる。


「い、いいえ、今は、平気です。あの、トゥーイッラ魔術騎士団長は……」


「俺は大丈夫だ」


そう言って袖を捲り、自身の痣を見せてくれた。

初めて見る彼の右手首の痣は私と同じくらいの大きさだが、琥珀色をしていた。


「この痣ができたあの日から、ずっと捜していたんだ」


頭上から響く声に顔を上げれば、真摯な眼差しに射貫かれる。


「……なんでいなくなった?」


もう一度尋ねられる。

彼の強い魔力を感じ、呼吸が乱れる。

なにか答えなくてはと口を開きかけたとき、騒々しい複数の足音が近づいてきた。

おざなりなノックの後、外廊下へとつながる扉が荒々しく開かれる音が響く。

彼は眉間に皺を寄せ小さく息を吐いて、自分の髪を結わえていた幅広の琥珀色のリボンをほどく。

そして私の痣を隠すように手首に巻きつけた。

微かに触れる指先から伝わる熱に鼓動が乱れる。
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