皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「少し事情を説明してくる。迎えに来るまで休むように」


そう言って、体を起こした彼は隣室へと向かった。

ひとり残された私は右手首に結ばれたリボンに指先で触れた。

彼の一族はメリハ族嫌いのはずだが、私に触れる手は優しく、気遣ってくれているようにも思えた。

それとも皇城内、しかも最重要保護対象だから、個人的な感情は押し殺して丁重に扱ってくれているのか。

今後、私をどうするつもりなのだろう。

流されるようにここまで来てしまったが、きちんと尋ねて身の振り方を考えなければ。

彼に迷惑をかけるつもりはないと再度伝えよう。

トゥーイッラ魔術騎士団長は運命の伴侶の否定はしていなかったが、身分も立場も違ううえ、疎んでいる民族との婚姻など本意ではないはずだ。

どれだけ時間が経ったのか、先行きの見えない不安を打ち消すように決意を無理やり固めていたところ、扉の向こう側から突如複数の男性の大きな声が響いた。

緊張で速まる鼓動を必死に押さえつけ、立ち上がる。

恐る恐る扉に近づいたとき、静かに扉が開いた。

扉を開けたトゥーイッラ魔術騎士団長は私がすぐ目の前にいるのに驚いたように軽く目を見張る。


「アレン、なぜ扉の前で立ち止まって……ああ、すごいね、見事な銀色、伝承どおりだ」


彼の背後から響いた穏やかな男性の声に目を見開く。
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