皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
ボルトの指示を受けた侍女頭、ケティに案内されたのは以前に過ごしていた部屋ではなく、アレン様の私室の隣、伴侶の部屋だった。


「あの、私は以前のお部屋で……」


「いけません。今夜の準備をいたしますので少々お待ちください」


ケティは室内のチェックを素早く終え、数人の侍女を呼び寄せ私の支度を整えていく。

入浴だけは頼んでひとりですませたが、それ以外は完全にされるがままだった。

食事も勧められたが、食欲はわかず緊張のせいか吐き気がしていた。


「――準備は以上です。アレン様のお帰りまでしばらくお待ちください」


退出するケティに返事をして、ソファに腰を下ろす。

さすがに寝室で待つ勇気はない。

落ち着かず視線を動かせば、壁にかかった大きな鏡に真っ白なナイトウエア姿の自分が映る。

背中半分ほどの長さの銀髪、面長の顔に目立つ淡い琥珀色と紫色の二重の目。

身長百五十六センチ、二十二歳にしては凹凸が無さすぎるこの体を今夜さらすのかと考えるだけで泣きたくなる。

少しでも緊張をほぐすべく、贈られたヴェールを身に着けた。

いつもと同じ視界にゆっくり息を吐き出し、現実から逃げるように目を閉じた。
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