皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
1.導かれたふたり
「父様、母様、行ってきます」
時間を計算して準備していたはずなのに、遅れそうだ。
自宅と店舗を区切る扉を開け、慌ててリビングを振り返り、早口で挨拶する。
リビングの飾り棚に並ぶ絵姿のふたりは、変わらない姿で穏やかに微笑んでいる。
「メリハ族の生き残りだと知られないよう気をつける、大丈夫よ」
いつもと同じ台詞を自分に言い聞かせるようにつぶやき、藍色の外套のフードを深くかぶる。
その際に銀髪が淡い茶色に、琥珀色と紫色の目が両目ともに髪と同じ淡い茶色に魔術で変化しているのを出入り口前にある鏡で素早く確認して、外に出た。
長い雪の季節を終え、やっと新芽が顔を出してきたが、まだ風は冷たい。
ブーツの踵が硬い石畳に音を立てる。
通いなれた皇城への道を、うつむきながら足早に進んだ。
皇城の入り口で通行証を見せたとき、門番に声をかけられた。
「治療院の薬師だな……第一騎士団への薬品量を増やせないのか」
「申し訳ございません。各団の皆様に平等に配布するよう言われております」
「今週末の舞踏会の件もあるし、うちへの態度は改めたほうがいいぞ。お前程度の薬師、いくらでも代わりがいるのだから。まったくカナック伯爵のお考えはよくわからない。やはり情が厚いのか」
嫌みのこもった発言、視線は毎度のことだ。
時間を計算して準備していたはずなのに、遅れそうだ。
自宅と店舗を区切る扉を開け、慌ててリビングを振り返り、早口で挨拶する。
リビングの飾り棚に並ぶ絵姿のふたりは、変わらない姿で穏やかに微笑んでいる。
「メリハ族の生き残りだと知られないよう気をつける、大丈夫よ」
いつもと同じ台詞を自分に言い聞かせるようにつぶやき、藍色の外套のフードを深くかぶる。
その際に銀髪が淡い茶色に、琥珀色と紫色の目が両目ともに髪と同じ淡い茶色に魔術で変化しているのを出入り口前にある鏡で素早く確認して、外に出た。
長い雪の季節を終え、やっと新芽が顔を出してきたが、まだ風は冷たい。
ブーツの踵が硬い石畳に音を立てる。
通いなれた皇城への道を、うつむきながら足早に進んだ。
皇城の入り口で通行証を見せたとき、門番に声をかけられた。
「治療院の薬師だな……第一騎士団への薬品量を増やせないのか」
「申し訳ございません。各団の皆様に平等に配布するよう言われております」
「今週末の舞踏会の件もあるし、うちへの態度は改めたほうがいいぞ。お前程度の薬師、いくらでも代わりがいるのだから。まったくカナック伯爵のお考えはよくわからない。やはり情が厚いのか」
嫌みのこもった発言、視線は毎度のことだ。