皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「私の婚姻なので、私が彼女と話します。どうぞお引き取りを」


「おい、アレン」


プラント公爵令息が声を上げる。


「ミクス殿下、グリナダ王国の件も含めきちんと説明しますから。ブライアンも出て行ってくれ」


「仕方ない、出直そう。妹の恩人の女性を責めるのは気が引ける。キラナ嬢、突然申し訳なかった」


私の頭上で三人の男性が会話を続ける。

返答しなければとわかっているのに、余裕がなく、ただ頭を下げ続けるしかできなかった。

三人が席を立って出て行く姿が低い視界から見え、しばらくして扉が開まる音が聞こえた。

トゥーイッラ魔術騎士団長が戻ってきて、再び私の隣に腰を下ろす。

テーブルの上の紅茶はすっかり冷め切り、ふたりきりの室内に重く静かな空気が漂う。


「……顔を上げてくれないか」


低い声に、跳ね上がった鼓動を押さえつけ、恐る恐る頭を上げた。

砦で触れた彼はとても優しかったけれど、トゥーイッラ魔術騎士団長は常に冷静沈着かつ無表情で有名だ。

考えはもちろん、感情なんて到底わからない。


「ミクス殿下、ブライアンが話したのは事実だ。俺との婚姻は避けられない。君が納得できなかろうが関係ない」


「トゥーイッラ魔術騎士団長は婚姻相手が私でよろしいのですか?」


「俺がなぜ君を捜していたと思う?」


質問に質問で返され、返答に窮する。


「最初はただ驚くべき体の回復と突然の魔力過多症状の改善理由、急に現れた痣の意味を知りたかった」


……そこからどう婚姻に結びつくのだろう。
< 62 / 163 >

この作品をシェア

pagetop