皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「グリナダ王国は六年前に前王が崩御され、前王妃のひとり息子が王位を継承したのは知っているか?」


現国王は三十五歳、王妃との間にふたりの王子が誕生していると以前トルン医師から教えてもらった。


「はい、たしか前王妃様がお亡くなりになって現在の王太后様が嫁がれたんですよね」


「ああ、前王妃はメリハ族の血を引いていたそうだ。ちなみに約五百年前にグリナダから嫁いだ姫もな」


初めて知った事実と思いがけない巡り合わせに驚く。


「だからこそ、余計にグリナダ王国はメリハ族との婚姻を反対しないだろう。重ねて言えば、誰の庇護もない君の存在が、今、隣国に知られれば連れ去られる可能性も否めない。ミクス殿下が話の裏に込めた本意はここにある」


私を真っ直ぐに射貫く目は真剣だ。


「これは非公式な皇帝命令による政略結婚だ。俺にとって君との婚姻は他国との問題を避けられるうえ、持ち込まれる縁談から解放される利点がある。君が以前のように逃げず、引受けるならトルン医師を罪に問わないようミクス殿下に頼もう」


「ほ、本当ですか?」


予想外の提案に、トゥーイッラ魔術騎士団長に思わず確認する。


「俺は嘘は言わない。もちろん君の身の安全も保証する。ただしトゥーイッラ家の行事や慣習には従ってもらうし、君からの離婚は認められない……どうだ?」
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