皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
新居での出迎えもなく、私室は遠く離れ、いつ会えるかも不明。

職務なのだから仕方ないが、私を避ける口実ではと考えてしまう。

歓迎を表わす手の込んだ食事が準備されていたが、ひとりきりなうえ、緊張と疲れ、今後の不安でほとんど口にできなかった。

申し訳なく、これからは品数、量を減らして欲しい旨と今日食べ切れなかった分は明日いただきたいと公爵家の侍女にお願いしたところ、複雑そうな表情を向けられた。

その真意を考える余裕がすでになく、精一杯の笑顔を貼りつけて自室に戻った。

自室は換気がされており、優しく落ち着いたサーモンピンクの壁紙を基調にし、カーテンや寝具類も柔らかな色合いのもので揃えられていた。

家具も磨き上げられた使い心地の良いものが置いてある。

つい先日まで暮らしていた街中の自宅はもちろん、伯爵家の自室より広く豪華で驚く。


「婚約者が居住を移した初日ですよ? 不在、ヴェールって……バカにしすぎでしょう!」


憤慨するメアリを小声で宥める。


「彼にとってこの結婚は望まれたものではないの。もう十分配慮していただいているでしょう」


「それはお嬢様もでしょう。お優しすぎますよ、カナック伯爵ご夫妻にお伝えすべきです」


メアリは伯爵夫妻の身の安全と引き換えに私が結婚を了承した件を知らない。
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