皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「伯爵家を出てすぐに弱音を吐くなんて、心配をかけるだけよ。私にはメアリがいてくれるし大丈夫。それに顔をあまり合わせないほうが自分の時間も多く持てるから、薬剤を調合できるし、研究もできてありがたいでしょ。干渉されないほうが楽よ」


「わかりました……ですがあまりにもひどい状況の際はご連絡いたしますよ。調合も、このお屋敷の内情がよくわからない今は、大っぴらになさるのはおやめくださいね」


明日から少しずつ侍女たちと話をしてお屋敷について聞き込みますと、社交的で頼もしいメアリが言い切る。


「ありがとう、メアリがいてくれてよかった」


本心から感謝を伝える私に、メアリが照れたように笑う。

伯爵家よりも豪奢なうえ、右も左もわからず、人々の思惑も不明なこの大邸宅のなかでひとりきりならもっと不安だっただろう。

私はここで生きていく以外術はない。

ならば少しでも明るく生活できるようにしたい。

悲嘆に暮れてばかりいたら、大事なものや些細な幸せを見逃してしまう。

母は最愛の伴侶をなくし、苦境に立たされていても明るく前に進む力を失わなかった。

母のように強く、困難の中でも自分にできる事柄、幸せを見つけて生きていきたい。

気を抜けば一気に不安に引きずり下ろされそうな心を奮い立たせ、無理やり柔らかなベッドに潜り込み、目を閉じる。

けれどなかなか快適な眠りは訪れなかった。
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