皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「なぜ、そうなる? 名前で呼ぶように」


面倒くさそうに言い捨て、彼はギルハンとともに部屋を出て行く。

後を追うため、急いで席を立った途端、振動でカシャンと茶器類が音を立てる。


「ご、ごめんなさい」


慌てて謝り、食器類が割れてないかを目で確認する私にケティが声をかける。


「お気になさる必要はございません。お怪我はありませんか? どうぞお食事をお続けください」


「いいえ、あの、今から外出されるのよね?」


指摘されたせいもあり、敢えて名称を出さず尋ねる。


「はい、いつもこの時間には皇城に向かわれます」


「わかりました、ではお見送りに参ります」


「お嬢様!」


ケティに引きとめられたが、首を横に振って部屋を出る。

メアリが後ろからついてきてくれていた。

ふたりはずいぶん先の廊下を歩いており、早足で追いかける。

差が少しずつ縮まり、会話が少し聞こえてきた。

声をかけるべきか迷っていたところギルハンの声が耳に入った。


「――プラント公爵令嬢がお礼とお詫びに伺いたいとおっしゃっています」


「言い出したのはどうせイスズだろ」


「さすが、よくおわかりですね」


「まったくあいつは……仕方ないな」


口調は咎めているが、声には優しさが滲んでおり、気分を害しているわけではなく、受け入れているのがわかる。

ギルハンに向けた目は穏やかで、こんな雰囲気の彼は初めて見た。
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