皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
現トゥーイッラ家当主は皇帝とは旧知の仲で国政の重要人物だ。

多忙なため、公爵家領地などに関わる執務のほとんどは、アレン様が職務の傍ら行っているそうだ。

公爵邸に移って一カ月が過ぎた。

私への警戒からか、よそよそしさが目立った屋敷の人々は少しずつ会話をしてくれるようになっていた。

私の日常については定期的にギルハンが報告しているらしく、庭園の散歩などの許可ももらっていた。

アレン様と屋敷内で会える機会はほぼなく、面会が必要な際は事前にギルハンやボルトに頼んで時間を作ってもらうしかなかった。

けれど多忙のせいか避けられているのか、大抵は言付けですまされていた。

私は安全上の理由から公爵家敷地外には出られないため、せめて時間を有意義に使おうと屋敷内や習慣、しきたりについて積極的に学び、一方で通常の薬の調合をこなす毎日を過ごしていた。

手荒れが目立つ侍女にハンドクリームを、咳のとまらない御者や体調不良の従者に薬を渡したりもしていた。

同じ屋敷で生活しているが、今も伴侶となる彼についてほとんど知らない。

どうすればよいかと思案していた矢先、彼から痣を隠すための腕輪が贈られた。

腕輪は軽く、繊細な彫刻が施され、美しい紫水晶が埋め込まれていた。

素晴らしい贈りものに心が温かくなり、感謝の気持ちでいっぱいになった。

持ってきてくれたギルハンに礼を伝えて欲しいと頼んだが、やはり自ら礼を伝えるべきではと考え直し、ギルハンを追うように部屋を出た。
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