皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
「今日はあの辺りでこの実を採取しました。胃もたれによく効く……」


「散歩に屋敷の散策、我が公爵家について聞き込み、屋敷の人間にやたら薬を渡しているらしいな。もう一度尋ねるが、なにを企んでいる? 周囲を取り込む気か? 薬や治癒の力を誇示しても立場も状況も変わらない。婚姻も予定どおり行う。変な気を起こすな」


「あの、本当に私は」


「屋敷内で不審な出来事があれば真っ先に疑われるのは君だ。神殿での結婚式は二週間後だ、それまで部屋から出ずにおとなしくしているように」


最後に一度強く手首に力を込め、彼が手を離す。

十分に手加減されただろうが、ほんの少し赤みを帯びたそこには彼の魔力がまとわりつき、アレン様のイラ立ちが感じられた。

魔力過多をうまくコントロールするために私と婚姻するのに、会話すらままならない現状ではなにも改善できていない。

魔力過多は当人の疲労もずいぶん大きいと言われているし、イラ立つのもわかる。


「薬を作るのも禁止だ。これは取り上げる」


「お待ちください、旦那様! それではキラナ様が……」


慌てて声を上げたメアリを、彼が氷のように冷たい目で射貫く。

漏れ出る彼の多量な魔力に口を閉じたメアリの顔色がどんどん悪くなっていく。
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