ラビット・ボンド
「じゃあ悪いんだけど、何も言わずに聞いてくれる!?」

 いろいろあったけどいったん置いておくとして、私は当初の目的を果たすことにした。
 
 とにかく誰かにぶつけたい、この想い。
 相手がご本人様なのは想定外だけど、この際気にしないことにする。
 
 私は、ん? と言葉を待つトラオめがけて口を開いた。

「トラミミがこんなにウケてんの意味わかんなくない!? あの頃って美月ちゃんアイドル卒業したばっかだったのに!? こんなチャラ男と!?」

「あ、俺の悪口?」

 当時も散々ぶうたれてたけど、気持ちがよみがえって文句が止まらない。
 ここしばらく忘れてただけで、ずっと根に持ってたらしい。自分でも気付かなかった。

「超嫌だったし超超超しんどかったけど――」

「あはっ。俺超嫌がられてる。顔やば。マジ嫌そう」

「トラオがどうこうっていうより世間の空気! 意味不明すぎ! なんでそんな受け入れ態勢なの!? みんなどうしちゃったの!? 一緒に箱庭にいた仲間じゃん!? なんでそんな穏やかなの!?」

「たしかになー。俺も意外とイケんだなって思った気する」

「うるさい!!!」

 その感想、世界一いらん!
 きぃーっとにらむと、トラオが肩をすくめる。
 
「私がおかしい!? ってずーーーーーっと思ってた! けど! そんなことなくない!?」

「そうだそうだー」

「だよね!? 私おかしくないよね!?」

「うんうん、リカちゃんは悪くない」

 ご本人様の謎の合いの手にノッて、爆発する。気持ちよく爆発できて、だいぶスッキリした。

 満足したから、いつもの結論に着地する。
 
「でも無理な人は絶対いて、みんなきっと陰で泣いてて、私もその一人で、それでいいんだよね。美月ちゃんの前ではみんな笑ってる方がいいに決まってる」

 荒れるだけ荒れるくせに、毎度こう。じゃあ荒れなきゃいいのは分かってるけど、そんな簡単な話じゃない。
 どうしようもないから、こうして折り合いをつけて生きていくしかない。
 
「……美月ちゃんには優しい世界にいてほしいし」

「俺は?」

「知らん!」
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