ラビット・ボンド
――半年ぶりの美月ちゃんは、天使のように美しかった。
シックなドレスに身を包んで、普段より大人っぽくて、それでいて天使の羽が見えた。
ああ……かわいかった……。
目に焼き付けた美月ちゃんを思い起こしながら、出口までぼんやり歩く。
平日の夜の市民ホール。いつもはきっと静かな場所。そこらじゅうに幸せが振りまかれてる気がした。
おそらく、客席にいた人のほとんどが美月ちゃんのファンだ。私も含め、みんな久しぶりの美月ちゃんを噛み締めてるに違いない。
ふわふわした人たちの流れに身を任せて会場のドアをくぐる。外に出ると、ふわふわたちは思い思いに散っていった。
空を見上げると、来るときにはしとしと降ってた雨まで止んでる。美月ちゃんが晴らしてくれたんだ! なんて、ふわふわ思った。
ふと、玄関口の柱にもたれた人が目に入る。
私だけじゃなく、辺りの人みんな見てる。なぜなら、会場から出てくる大勢に向かって手を振っているから。
こっちを見てる気もするけど、多分気のせいだ。周りに人いっぱいいるし。ファン仲間なんてできた試しがない私は、イベント会場で誰かと会うことはない。
深くかぶったハットとマスク。怪しげな男だな……という認識だけして、視界から外した。27年も生きてれば、自分に手を振ってるって勘違いする恥ずかしさは学んでる。
いや、やっぱこっちに来てる……?
歩きながら、視界の隅に男の気配を捉えた。どんどん近づいてくる。もう人混みも散ったし、やっぱり私かもしれない。
確認すべく顔を向けると、数メートルのところまで来てた男が口を開いた。
「なーんで無視すんの?」
聞き覚えのある声。見覚えのあるシルエット。帽子とマスクの隙間から見えるニィっと細められた目。脳みそが高速処理をして結論を出す。
トラオじゃん!
って言葉が喉のココまできてたけど、すんでのところでどうにか止めた。
代わりに、しぬほど小声で問いかける。
「な、なにしてんの……?」
シックなドレスに身を包んで、普段より大人っぽくて、それでいて天使の羽が見えた。
ああ……かわいかった……。
目に焼き付けた美月ちゃんを思い起こしながら、出口までぼんやり歩く。
平日の夜の市民ホール。いつもはきっと静かな場所。そこらじゅうに幸せが振りまかれてる気がした。
おそらく、客席にいた人のほとんどが美月ちゃんのファンだ。私も含め、みんな久しぶりの美月ちゃんを噛み締めてるに違いない。
ふわふわした人たちの流れに身を任せて会場のドアをくぐる。外に出ると、ふわふわたちは思い思いに散っていった。
空を見上げると、来るときにはしとしと降ってた雨まで止んでる。美月ちゃんが晴らしてくれたんだ! なんて、ふわふわ思った。
ふと、玄関口の柱にもたれた人が目に入る。
私だけじゃなく、辺りの人みんな見てる。なぜなら、会場から出てくる大勢に向かって手を振っているから。
こっちを見てる気もするけど、多分気のせいだ。周りに人いっぱいいるし。ファン仲間なんてできた試しがない私は、イベント会場で誰かと会うことはない。
深くかぶったハットとマスク。怪しげな男だな……という認識だけして、視界から外した。27年も生きてれば、自分に手を振ってるって勘違いする恥ずかしさは学んでる。
いや、やっぱこっちに来てる……?
歩きながら、視界の隅に男の気配を捉えた。どんどん近づいてくる。もう人混みも散ったし、やっぱり私かもしれない。
確認すべく顔を向けると、数メートルのところまで来てた男が口を開いた。
「なーんで無視すんの?」
聞き覚えのある声。見覚えのあるシルエット。帽子とマスクの隙間から見えるニィっと細められた目。脳みそが高速処理をして結論を出す。
トラオじゃん!
って言葉が喉のココまできてたけど、すんでのところでどうにか止めた。
代わりに、しぬほど小声で問いかける。
「な、なにしてんの……?」