ラビット・ボンド
問いかけたくせに答えも聞かず、私はキョロキョロと周囲を見回した。
多少散ったとはいえ、まだまだ人がたくさんいる。これから出てくる人もいる。
こんなとこにいて、気付かれたらどうすんの!?
「ちょちょちょ、こっちきて」
玄関口から離れて、人がいない壁際にトラオを連れて行く。
ここなら明かりもあまり届かない。顔も見えないし、近付かなければトラオだとバレないだろう。
はあ……。
深いタメ息をつく。なんかドッと疲れた。こっちが勝手にハラハラする。
「久しぶりじゃん、元気してた?」
トラオは相変わらずヘラヘラしてて、力が抜ける。本人がこうってことは、案外いけるもんなのかもしれない。
「うん元気……じゃなくて、ねぇ、なにしてんの?」
「リカちゃんに会いたくて、来ちゃった」
語尾にハートをつけて、トラオが言う。
ハートはとりあえずスルーして、眉をひそめた。
来ちゃったって、どういう……?
訝しむ私に、トラオがすぐ答えをくれる。
「もうすぐミミに会えるって言ってたっしょ?」
なるほど。美月ちゃんのイベントを調べれば、自ずと私の居場所が分かるってわけか。
「仕事結構ギリギリだったし、間に合ってよかったー」
お疲れ、と呟きながら、頭では別のことを考える。
どうやってここに来たかは分かった。でも、なんでここに来たのか全く分からない。
――いや、全く分からないというのはウソ。
分からなくもないけど……そんなことあり得る?
「このあとどうすんの?」
いまだ混乱する私を置いて、トラオはどんどん話を進めていく。考える隙を与えてくれない。
もしや、わざとじゃあるまいな。そういえばトラオは魔術師だった、と思い出す。
「帰るよ」
「電車?」
こくり頷くと、トラオが一歩前につめてきた。
「んじゃ駅まで一緒に行っていい?」
「え、電車乗るの!?」
芸能人なのに!? って書かれた顔で驚く。
美月ちゃんも以前は電車に乗ってるような話もしてたけど、最近はもう乗ってなさそうなのに。トラオはよっぽど顔売れてるし、もっと乗らなさそう。
私の問いに、トラオがふるふる首を振った。それはそうか。
「車で来た。乗ってく?」
「乗らない」
だよね、とトラオが小さく笑う。
「なら、駅まで一緒に歩きたい」
車で来たけど駅まで行く。つまり、私に話があるってことだろう。
どこか行こうってお誘いなら断れるのに、なかなかやり手だ。素直に感心する。さすがチャラ男の新星というだけある。知らんけど。
ホールから最寄り駅まで、徒歩15分ほど。ちょっとアクセス悪めだけど、話をしながら歩く分には丁度いいかもしれない。
私が答えあぐねてると、ダメ? と瞳だけで訴えられた。顔なんかほとんど見えないのに、引力がすごい。
「……いいよ」
気付けば、そう答えていた。
多少散ったとはいえ、まだまだ人がたくさんいる。これから出てくる人もいる。
こんなとこにいて、気付かれたらどうすんの!?
「ちょちょちょ、こっちきて」
玄関口から離れて、人がいない壁際にトラオを連れて行く。
ここなら明かりもあまり届かない。顔も見えないし、近付かなければトラオだとバレないだろう。
はあ……。
深いタメ息をつく。なんかドッと疲れた。こっちが勝手にハラハラする。
「久しぶりじゃん、元気してた?」
トラオは相変わらずヘラヘラしてて、力が抜ける。本人がこうってことは、案外いけるもんなのかもしれない。
「うん元気……じゃなくて、ねぇ、なにしてんの?」
「リカちゃんに会いたくて、来ちゃった」
語尾にハートをつけて、トラオが言う。
ハートはとりあえずスルーして、眉をひそめた。
来ちゃったって、どういう……?
訝しむ私に、トラオがすぐ答えをくれる。
「もうすぐミミに会えるって言ってたっしょ?」
なるほど。美月ちゃんのイベントを調べれば、自ずと私の居場所が分かるってわけか。
「仕事結構ギリギリだったし、間に合ってよかったー」
お疲れ、と呟きながら、頭では別のことを考える。
どうやってここに来たかは分かった。でも、なんでここに来たのか全く分からない。
――いや、全く分からないというのはウソ。
分からなくもないけど……そんなことあり得る?
「このあとどうすんの?」
いまだ混乱する私を置いて、トラオはどんどん話を進めていく。考える隙を与えてくれない。
もしや、わざとじゃあるまいな。そういえばトラオは魔術師だった、と思い出す。
「帰るよ」
「電車?」
こくり頷くと、トラオが一歩前につめてきた。
「んじゃ駅まで一緒に行っていい?」
「え、電車乗るの!?」
芸能人なのに!? って書かれた顔で驚く。
美月ちゃんも以前は電車に乗ってるような話もしてたけど、最近はもう乗ってなさそうなのに。トラオはよっぽど顔売れてるし、もっと乗らなさそう。
私の問いに、トラオがふるふる首を振った。それはそうか。
「車で来た。乗ってく?」
「乗らない」
だよね、とトラオが小さく笑う。
「なら、駅まで一緒に歩きたい」
車で来たけど駅まで行く。つまり、私に話があるってことだろう。
どこか行こうってお誘いなら断れるのに、なかなかやり手だ。素直に感心する。さすがチャラ男の新星というだけある。知らんけど。
ホールから最寄り駅まで、徒歩15分ほど。ちょっとアクセス悪めだけど、話をしながら歩く分には丁度いいかもしれない。
私が答えあぐねてると、ダメ? と瞳だけで訴えられた。顔なんかほとんど見えないのに、引力がすごい。
「……いいよ」
気付けば、そう答えていた。