ラビット・ボンド

CHAPTER 01

 2本目の瓶ビールを持ってきてくれたおばちゃんが、なんだか物言いたげな目をしている。よく飲むねえ、みたいな感じ。視線というのは世界共通らしい。
 私は、愛想笑いで場を濁した。

 西田里香、27歳になって10日ほど。
 
 自分への誕生日プレゼントとして、東南アジアのリゾートに一人で来ちゃったりなんかしている。
 それなりに観光地なはずのここは、ゴールデンウイークが終わって数週間という時期だからか、日本人っぽい人をあまり見かけない。私はたまたま仕事を休めてラッキーだった。
 
 ビーチのすぐそばにあるこの宿には、カフェバーが併設されていた。居心地良さそうな雰囲気だったので、観光もそこそこに夕方から腰を落ち着けている。チェックインのときから目を付けてたけど、昨日は飛行機の疲れですぐ寝ちゃったから、今日こそ飲むぞ! と意気込んでいた。
 テラスというほどオシャレではないけど、店先に出ているテーブル席。柵の向こうは砂浜で、目の前には夜の海が広がっている。リゾートらしくビーチサイドは店の灯りで賑わっていて気分が上がる。日が暮れれば暑さも和らぐし、そもそも暑いぐらいがビールに合う。
 スパイスの効いたつまみも最高に美味しいし、そりゃあ酒も進むってもんよ。
 
 でも、浮かれてるから飲んでるわけではない。確かに最初はそうだったけど、今は違う。
 完璧なヤケ酒だった。
 グラスについだビールをぐいっと飲みほして、手元のスマホを覗き込む。そこにはヤケ酒の元凶があった。

 ――宇佐美美月と橘虎雄のツーショット。
 
 美月ちゃんのSNS更新通知をウキウキで開ければこんなものが目に飛び込んできた。キャプションには『この前ばったり会ったよ』の文字。テレビ局だかスタジオだかを背景に、仲良さげに笑っている。
 
 
 世界で一番好きな子の笑顔は、しぬほど愛おしくて、しぬほど胸が苦しい。
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