ラビット・ボンド
 宇佐美美月ちゃん。通称ウサミミ。ツインテールがとても似合う、お人形さんみたいなアイドルだった。
 私にとって天下無敵のアイドルだった美月ちゃんは、二十歳の誕生日にグループを卒業した。
 それから約一年半、今は立派に役者の道を歩んでいる。ツインテールはもう跡形もなく、役が変わるたびにヘアスタイルも変わる。
 
 私はまだ、男とのツーショットに慣れないでいた。
 箱庭のようなアイドル活動で守られていたのは、アイドルではなくファンである私だったらしい。
 
 とりわけこのヘラヘラした男、橘虎雄とのツーショットはマジで無理。ムリすぎる。無理というか嫌というかダメージがでかい。
 それなのにトラミミなんてコンビ名まで浸透して、大勢のファンに受け入れられていた。きっと今もトラミミ好きなファンたちが騒いでるに違いない。何故、何故、何故。
 
 久々のツーショットに、自分でも驚くほど動揺していた。
 動揺しすぎて空のグラスを口に運ぶ。いちいちグラスにつぐのもじれったくて、瓶から直飲みスタイルに変更する。
 とにかくアルコールになんとかしてほしかった。
 
 画面の中の美月ちゃんを見ながら、悶々と考える。なんで今このツーショットを。急に。なぜ。
 直近に投稿されてる美月ちゃんとは髪色が違うから、しばらく前に撮影したっぽいのに。
 
 橘虎雄との共演は、ずいぶん前に終わっている。美月ちゃんがアイドルを卒業して初めての映画だった。
 初々しい学園ラブコメで評判も上々。美月ちゃん演じるヒロインは本当に本当にかわいかった。この映画をきっかけに、ウサミミとして美月ちゃんの名前が売れた。
 
 投稿をよく見れば、映画公式アカウントのタグがつけられている。タグをたどって納得した。
 
 あの映画の公開から、ちょうど今日で一年らしい。
 美月ちゃんにはこういうロマンチックな一面がある。天才的にかわいい。めっちゃ好き。

 ああ、あれからもう一年経つんだな……。
 感慨深い気持ちを、更に酒で流していく。
 
 思い返せばつらい日々だった。いや、幸せな日々だった。
 上がったり下がったり、ジェットコースターのような日々だった。
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