ラビット・ボンド
 私の質問に、トラオが一瞬固まる。
 それから目を伏せて――。

「んぇえ~~~~~~~?」

 ――変な声で鳴いた。

 は? と口をあんぐり開けて、今度は私が固まる。
 
 なにそれ!? どんなリアクション!?
 
 ポカンとしてると、トラオが変な鳴き声で唸るのをやめて、目を合わせてきた。
 そして、じぃーっと私を見たまま、ゆっくりと頷く。

「……ぅん」
 
 声ちっちゃ。
 まあ、頷いたってことは、肯定したってことだろう。
 
 そりゃあそうだ。口説いてるに決まってる。いや、なんで? とは思うけど、口説く気なかったら逆に怖い。
 勘違いが恥ずかしいとかいうレベルの話じゃなくて、こんなとこまで来てわざわざ私を待ち伏せる理由が分からなすぎる。
 意味不明なのが一番怖い。口説く気あるのが一番納得できる。

 ただ――。

「何? その間は」

 鳴いてから頷くまでの謎の間。マスクで表情はよく見えないけど、絶対しぶしぶ頷いたと思う。

「んー、超難問だった」

 難問? 意図が読めなくて、私は眉をひそめる。

「だって……バカ正直に口説いてますって宣言したらリカちゃん秒で断りそうじゃん」

 わお、図星だ。
 実際、断るために確かめた。念を押した、に近いかもしれない。
 
「でも絶対バレてるし。分かってて聞いたでしょ?」

「まあねえ」

「俺としたことが、イイ感じの返事全然思いつかなくてさ」

 トラオが大げさに肩をすくめてみせる。それが可笑しくて、私はフフッと笑った。
 それから、口を開く。トラオの推測通り、断るために。

「ありがと。でも――」

「断らないで」

 ――ごめん。
 続く言葉がトラオの瞳に吸い込まれていった。
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