ラビット・ボンド
「――まだ、断らないで。そんな重たい話じゃないし。もうちょい時間ちょーだい?」

 今までで一番甘えたな声。トラオはいろんな武器を使って魔術をかけてくる。

「普通に飲み行ったりしよーよ。この前楽しかったじゃん。リカちゃん楽しくなかった?」

「……楽しかったけど」

 めちゃくちゃ楽しんでしまったから、あんなことになったわけで。
 私はふるふると首を振った。

「じゃ、今度また飲み行こ」

 トラオがスマホをちらつかせる。連絡先をよこせ、の合図だろう。

「リカちゃんいつもビール派? この前は海外だから飲んでただけ?」

「え、超ビール派。1杯目から100杯目までずっとビール」

 100杯はヤバ、とトラオが笑った。
 さっきまでの、少しだけ緊張した雰囲気がウソみたいで、私の思考まで緩んでいく。
 
 ……まあ、別にいっか。
 ぶっちゃけ飲み相手は欲しいし。この前楽しかったし。そういえば今度会ったら連絡先教えるって言っちゃった気もするし。
 トラオは相変わらずヘラ男だし。気の迷いかもしれないし。面倒なことにはならなそうだし。

 なんか、考えるだけ無駄な気がしてきた。
 思考を停止して、トラオに流されるままスマホを操作する。

「助かった~。これでもうミミのイベント出待ちしないで済む」

 スマホをしまったトラオが、茶化すように言った。
 どこまで本気か知らないけど、そういうことなら助かったのは私の方だ。出待ちされるのはもう勘弁。

 適当に聞き流しながら、私はカバンをガサゴソ探っていた。どっかにあるはずだけど、普段あんまり使わないから、持ってるか微妙だ。
 
「あった!」

 お目当てのものをようやくみつけて、カバンから取り出した。
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