ラビット・ボンド
 え、ホントに連絡してくるんだ。
 へぇ~、と心の中で呟く。驚いたような、感心したような気持ち。

 あの夜、交換直後に一往復したっきり、トラオとは連絡をとっていなかった。とは言っても数日の話だから、さして気にしてもいなかった。
 今をときめく芸能人は、想像できないレベルで忙しそう。知らんけど。
 そのまま忘れられてもおかしくないし、正直、それでいい気もしている。めんどくさいことにならなければ、なんでもいい。

 でも今は、忘れられてなくて良かったと心底思う。
 なぜなら――。

『今夜あいてる? 飲み行こうよ』

 ナイスタイミングだから!
 
 ちょうど今夜、めちゃくちゃ酒が飲みたかった。
 
 長居しすぎるのもアレだから、ユイコの家に遊びに来た日はいつも夕方にはお暇する。今日も今日とて、あと2時間もしたらバイバイだ。
 明日も休みだし、真っすぐ帰らずに今夜は一人で飲みに行っちゃおうかなと思っていた。
 
 一人で飲むのも好きだけど、さっき謎におセンチになったから、誰かと飲みたい。
 誰かとダラダラ喋りながら飲みたいお年頃だ。
 
『行く!』

 そんなわけで、私は元気に返信した。


 メッセージを数往復。今夜の予定が決まったところでスマホをしまう。
 楽しそうに遊ぶユイコとアキくんの元へ合流すると、ご機嫌なアキくんがニコニコ目を合わせてくれた。かわいい。心が洗われる。

 ヘラヘラしていると、ユイコが口を開いた。

「最近あれ観てるんだよね。あれ、あのドラマ。昼に再放送してて」

「お姉さん、あれしか言ってないっすよ」

 まだ二十代なのに老化現象かもしれない。こわい話だ。

「ほらあれ、マセゴーのドラマ。橘虎雄とかが出てるやつ」
 
 うぇっ!?
 急に出てきたトラオの名前に心臓が跳ねる。ついさっき連絡してたもんだから、余計にびっくりした。

「やば、マジでタイトル出てこないわ」
 
 ユイコは老化現象と戦っていて、私の異変に気付いてなさそうだ。一安心。必死にポーカーフェイスを身にまとう。

「C組だC組! あ~思い出せた~」
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