ラビット・ボンド
「でもね、聞いて? お兄さん」

 ゆっくり喋り出した私に、トラオの視線が向けられる。

「私にとっては、ダラダラ飲みって超大事なことなわけですよ」

「だいじなこと?」

 うんうん、大げさに頷く。

「めちゃくちゃ大事! 友達と飲む機会がなくなった今、ダラダラ飲みチャンスなんて滅多にないし! 超貴重! 超大事!」

 何ひとつウソは言っていない。
 ダラダラ飲みは貴重で、大事な時間だ。ダラダラ飲みたいという気持ちは、そんなに悪いもんじゃないと思う。

「ん、大事なのはわかった。それで?」

 えっ。
 一瞬、時が止まる。勢いだけでなんとか押し切ろうと思ったけど、全然無理っぽい。

「いや、だから……褒め言葉のつもりだった!」

 苦し紛れに言葉を続けてみても、トラオの表情は晴れないままだ。

「ほんとに? 俺、褒められてる?」

 当然、訝しまれてしまう。
 こうなったら、意地でも言いくるめたくなってきた。出てきた言葉を適当に、脳で処理せず勢いよく口から並べていく。

「超褒めてる! だってさ、ダラダラ飲みたいってのは、素敵な時間を一緒に過ごしたいってことじゃん! そう思わせられるなんて、さすが橘虎雄! そこらへんの男とは一味違う! よっ! 日本一の色男!」
 
 ……何言ってんだコイツ。
 我ながら、さすがに無理がある。
 
 とりあえず様子を伺おうと、おそるおそるトラオに視線を投げる。
 トラオは、肩を震わせて笑っていた。どう見てもサイレント爆笑だ。
 
「え、なに」

「ふはっ……! ごめん、頑張って耐えてたけど日本一でギブ。おもろすぎた」

 何やらギブアップしたらしいトラオが、開き直ってゲラゲラ笑い始める。

 あーね。理解理解理解。
 トラオの様子から、全て察した。
 
「最悪なんですけど! いつから私で遊んでたの!?」
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