ラビット・ボンド
 ……“なんで?” 何が?
 
 何を聞かれてるのか、脳みそ一周しても分からない。
 目で問うと、トラオが口を開いた。

「なんで頭の片隅? リカちゃんのワガママなら、頭の真ん中に置いておく」

 ――前言撤回。どうやら私はプリンセスらしい。

 トラオがニヤリ微笑んでいる。チャラ男の新星として仕事ができて、満足してるに違いない。

「ホントよく言うよね……私がすんごいワガママ言い出したらどうすんの」

「ん? どうにかするから言ってみてよ」

 そう言われると、不思議なことに出てこない。プリンセス歴が秒だから、ワガママのレパートリーなんてあるわけなかった。
 黙る私に、トラオの勝ち誇った視線が突き刺さる。

「う、宇宙行きたいとか!?」
 
 負けてたまるか! と捻り出したワガママは、トラオに爆笑されて散っていった。



 2杯目を飲み終わるころには、すっかり空気もほぐれていた。それからは念願のダラダラ飲みだ。
 
 トラオは、仕事の話を一切せずに、普段何しているかを話してくれた。ゲームしたり動画観たり酒飲んだり。そこらへんの若い子とやってることは変わらないようで、なんとなくホッとする。

 私も私で、どうでもいい話をした。ユイコのとこのアキくんが私のプレゼントで遊んでくれて嬉しかった話とか、さっき大通り歩いてるときに全部の信号にひっかかった話とか。この間の旅行の話も少しした。帰りの飛行機で一生寝てた話とか、トラオと別れた朝に食べた屋台の話とか。実は滞在中にトラオも食べてたらしく、意外な共通点に二人して笑った。

 おいしいビールとおいしい料理。ダラダラ喋る相手もいて、しかも飲ませ上手なイケメンときている。それはもう、楽しいわけで――。

「マジ!? もうラストオーダー!?」

 ――私は、そこそこ出来上がっていた。
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