ラビット・ボンド
「やばい! 甘いの食べたい!」

 大急ぎでメニューを開く。ラストオーダーだと伝えに来てくれた店員さんを、待たせるわけにはいかない。
 ……いかないんだけど、超悩む。

 もちもちアイスなる美味しそうなデザートが私を呼んでいる。抹茶アイスときなこアイス。二つに一つ、究極の選択だ。

「どうしよ、決めらんない」

「どっちも頼めば? 余ったら俺が食うし」

 うんうん唸る私に、トラオが言う。

「やだ、選び抜く。選んでこそのデザートじゃん!」

「ふはっ。意味わかんねー」

 なんだか失礼な感じで笑われてる気もするけど、かまってる場合ではない。もうマジで店員さんを待たせられないから、脳内で必殺“美月ちゃんの言う通り”をする。
 どれにしようかなみづきちゃんのいうとおり!
 
「もちもちアイスきなこ味で!」

 なんとか注文を終えて、一息。店員さんを見送って、晴れて解放された気分だ。

「はあ、悩み疲れた……。きなこと抹茶ってやばくない? 悩みすぎて熱出るかと思った」
 
「まあ分かるけど、抹茶はまた今度食えばいいじゃん?」

 ――また今度。
 その言葉に意味があるのか、考える必要はなかった。そういう意味だとトラオの目が言っている。

 多分、ここではぐらかせば全部終わる。
 察しがいいトラオのことだ、拒否られたってすぐに気が付く。やんわり拒否できるように、あえてこんなふうに聞いてくれたのかもしれない。その割には自信満々だけど。
 
 面倒ごとを回避したいなら、ここではぐらかすのが最善だ。何もしないのが一番いい。
 けど――。
 
「うん、そうする」

 気付けば私は、頷いていた。

 酔っぱらった私に最善策なんて通じない。先のことなんて知ったこっちゃないし、今が楽しければそれでオッケーだし。
 
 とにかく今日は楽しかった。あと、もちもちアイス抹茶味は絶対食べたい。
 頷く理由は、それだけで十分だった。
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