ラビット・ボンド
「今日は会社?」

 こくり頷く。
 出社できて偉い! なんて、心うちで自分を甘やかしたりもする。

「今月最後の出社日だった」

 今月は本当にバタバタで忙しかった。先月がゴールデンウイークやらバースデー旅行やらで休みがちだったから余計に。あと梅雨時期に会社行くの普通にしんどいし。
 通勤だけでも嫌なのに、会社で残業なんかもしたりして。美月ちゃんに会えたからギリ耐えられたけど、会えなかったら無理だったかもしれない。マジでよく頑張った。
 
 そんな甘えた気持ちが心うちに留まらず、ダダ漏れる。

「偉いじゃん」

 トラオが笑って言う。褒めてと言わんばかりのドヤ顔が表に出たらしい。
 
「でしょ? 偉いから、今日はどっか飲み行こうと思ってたわけですよ」

 頑張る自分を甘やかし隊の私は、通勤電車に揺られながら自分への褒美を考えていた。
 いつも行くような安居酒屋よりちょっとだけランクを上げて、おいしいビールでも飲みに行こうかな、とか思ってた。
 ……まさか、素敵飲み屋でトラオと飲むことになるとは思ってなかったけど。
 
 まあ、マジで頑張ったし、良い店で酒を飲んでイケメンに褒められても罰は当たらん!

 想定より贅沢なご褒美を噛みしめる。

「トラオも今日仕事だった?」

 私が聞くと、トラオは探るような表情を返してきた。
 
 トラオの表情に、やっぱりな……と思う。
 私がワガママプリンセスになったことを、律儀に覚えてくれている。仕事かどうかを聞いただけでこれなら、マジでいつか宇宙に連れて行かれるかもしれない。

 プリンセスになったくせにわざわざ話を振ったのには理由がある。
 まず、さすがにプリンセスを気にしすぎないでくれ、の気持ち。

 それを読み取ってくれたのだろう、うん、とトラオが頷いた。

 それから――。
 
「偉いじゃん」

 ただ、褒めたかっただけ。
 ニヤリ笑うと、トラオの表情が緩む。甘やかし合うのもまた飲みの一興ってもんだ。
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