ラビット・ボンド


 それから、ダラダラと飲んだり食べたり喋ったり――。
 
 イイ感じにふわふわしてきた私の元に、3杯目のビールが届いた。
 届いたばかりの冷えたビールは最高だし、退勤時にはペコペコだったお腹も満たされて、すこぶる機嫌がいい。

 トラオもトラオで、同じタイミングで届いたハイボールに口を付けていた。
 
「……なぁに?」

 グラスを置いたトラオが、不思議そうに私を見る。
 
 聞かれて、自分がボケ~ッとしていたことに気付いた。
 トラオがグラスを持って飲み終わるまで終始見ていたらしい。そりゃあ不思議がるわけだ。

「ごめんごめん、なんもない。トラオの顔してるなーと思っただけ」

 ふと、思った。目の前に、トラオの顔をした男がいる。
 ……ていうか、正真正銘トラオなんだけど。

 この前トラオと会ってから、10日ほどしか経ってない。
 社会人になってからの10日なんてマジ一瞬で、言ってしまえば、日を置かずすぐに会った感覚だ。

 つまり、生身のトラオとかいう意味不明な存在にめちゃくちゃ慣れてて――麻痺している。
 もう、超普通。ちょっとした知り合い程度のテンションで飲んでいた。
 
 そしたらトラオの顔が視界に入って、なんかこう――。

「――見惚れてたんだ?」

 トラオが、口角を上げる。

 顔が抜群にいいな! と改めて思ったことを見惚れるというなら、まあそうなんだろう。

「うん、ホント良い顔してる。腹も立たないもん」

 感服する私に、トラオが分かりやすくキメ顔をよこしてきて、さすがにウケて爆笑した。


「そういえば、この前トラオが言ってた動画観た。ゲームのやつ」
 
「え、マジ? どーだった?」

「んーあれはクセになる」

 ゲームどうこうというより、喋りがおもろいと熱弁していた動画。トラオのお気に入りの一つらしい。
 実際観るとじわじわくるタイプのおもしろさで、ちゃっかり何本か観てしまった。

「ぶっちゃけ観てくれるとは思わなかった。リカちゃんゲームしないって言ってたし」
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