ラビット・ボンド
「もう一杯?」

 空けたグラスに、トラオが反応する。
 
 ん~~~飲みたい~~~。
 けど~~~明日も~~~仕事だ~~~。
 苦渋の決断をして、首を横に振った。
 そんな私の脳内を読んだらしく、トラオが目を細める。

「じゃ、抹茶アイス食う?」

「そうだ! 神デザートがあるんだった!」

 この間は結局きなこ味を食べたもちもちアイス。あれはマジでヤバかった。きなこ味の美味さを知ってしまったばっかりに、安易に抹茶味を選べない自分がいる。

「どうしよう!?」

「あ、また迷う感じ?」

 トラオの疑問を無視して、意味もなくメニューの文字とにらめっこをする。
 きなこ……抹茶……きなこ……抹茶……。
 いやいや、女に二言はない!



 ――もちもちアイス抹茶味、大正解すぎる。私ってば天才かも。
 悩みぬいた結果の一品が抜群に美味いとき、人は何故か自画自賛をする。知らんけど。
 
 神デザートに浸っていたら、こつん、という音がして現実に引き戻された。
 残り半分ほどになったアイスから目線をずらす。トラオがグラスを置いたらしい。中身は空っぽになっていた。
 そのまま顔をあげると、妙な面持ちのトラオと目が合う。

 何か言いたげなことは分かる。でも、何を言いたいのかはさっぱり分からん。
 考えても仕方ないので、素直に聞く。

「なに?」

「んー?」

 表情とは微妙にずれたような間延びした返事。

「なんか言いたそうだと思ったけど、気のせいだったかも」

 言う気ないならまあいっか。本当に気のせいかもしれないし。
 アイスに意識を戻したところで、トラオが笑いを含みながら口を開いた。
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