ラビット・ボンド
 まあ、本音を言うと人恋しい。誰かと喋りたい。
 誰でもいいから気を紛らわせてほしいし、知らない誰かに心のうちをぶちまけたい。
 でも、どうもこうも英語は無理。慣れないことに頭使うの面倒くさい。
 なんで海外に来たんだっけ……なんて、元も子もないことを思ってしまう。
 
 もうダメだ。トラミミツーショットが私の情緒をダメにしてしまった。
 ダメなのに、一人でいては気の紛らわせ方も思いつかない。やめたらいいと分かっていても、何度も何度もツーショットを見返してしまう。
 
 無邪気な美月ちゃんの笑顔はとってもかわいい。かわいいからこそ、心臓がきゅっとなる。
 
 ツーショットを見てはビールを飲んで、ビールを飲んではツーショットを見る。同じことの繰り返し。悪循環とはまさにこのこと。

 今飲んでるビールがいったい何本目なのか分からなくなった頃には、私はもうぐでんぐでんだった。

「うう……みづきちゃ……なんでこんなにずっとかわいいのぉ?」

 スマホめがけて問いかける。もちろん返事はいただけない。

「……そいつ……トラオと、つきあってるのぉ?」

 返事がこないと分かってるから聞けること。
 そうだよ、とか言われたらきっと私は耐えられない。

 私が一生見ることのできない顔を、隣の男に見せてるの?
 なんて、想像力まで働いてしまった。

「みづきちゃん……すきだよ」

 なんかもう泣きそう。泣けって言われたら秒で泣ける。もしかしたらもう泣いてるかも。



「おねーさん、大丈夫そ?」

 顔をあげて、声がした方向を見る。サングラスをした若い男が、店と砂浜を区切る柵によりかかっていた。
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