ラビット・ボンド
「大丈夫に見える!?」

 全くもって大丈夫ではない。謎の逆ギレでグラサン男をにらみつける。
 男は、ヘラヘラ笑いながら首を横に振っていた。
 なんだろう、上品なチャラ男という感じ。顔はよく見えないけど、イイオトコに違いない。
 
 そこで、私はあることに気付く。

「え、てか日本語じゃん。日本人?」

「そうだよー。おねーさん一人で飲んでんの? 危なくない?」

「んー、それは大丈夫。おばちゃんいるから」

 店内に目をやると、店のおばちゃんがこっちの様子を伺っていた。とっても律儀でありがたい。
 私は、おばちゃんに向かってオッケーサインを出した。

「それは、一緒に飲んでオッケーってこと?」

 私の合図を見て、グラサン男が聞いてくる。
 語尾にハテナがついてるけど、自信満々なのがすぐ分かる。絶対イケると思ってそう。相当遊び慣れてるな。
 
 ……まあ、余裕でイケるわけだけど。
 誰でもいいから喋りたかったし、それがイイオトコならなおさら良し!
 
 私は、テーブルの向こう側をバシバシ叩いて、こっちに座れと促した。
 
 
 席につくグラサン男を横目に、手元にあったメニューをみる。
 何飲むかな。私はまだビールでいいか。なんかつまみも追加しようかな。
 
 ていうか……大丈夫か?
 一緒に飲む流れになったものの、一抹の不安が頭をよぎった。
 
 結構若いかもしれない。酒飲める年齢かどうか気になってきた。
 確認すべく、顔を上げる。

「ンゲッ!!!」

 私の口から、生まれてこのかた聞いたこともない音がした。
 
 目に入ったのは、サングラスを外した元グラサン男。その整った顔が、お披露目されていた。
 
 
 ――私は、この男を知っている。

「トラオじゃん!!?」
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