ラビット・ボンド
「……最悪なんだけど」

「あれ、その反応は想定外」

「マジ最悪!! こんなことある!?」

「俺のことトラオ呼びなの? あんま聞いたことないから新鮮~」

「よりによって世界一会いたくない男に!!!」

「そんなに? もしかしてアンチってやつ?」

 目の前で、トラオがゲラゲラ笑っている。残念ながら、話はなんにも入ってこない。
 
 さっきまでスマホの中にいた男が、美月ちゃんの隣にいたコノヤローが、目の前で笑ってる。
 状況が理解できない。理解するのも面倒くさい。
 こんなときは、思考放棄に限る。
 
 とりあえず――。

「おばちゃーん、ビール追加で!」

 奥にいるおばちゃんに声をかけて、トラオに視線を戻す。

 トラオ、確か美月ちゃんの2コ上とかそんな感じだった気がする。美月ちゃんが21歳だから、23歳? とにかく酒は飲める年齢だ。
 最低限だけ考えて、あとはもう考えない。どうにでもなればいい。

「……トラオは? 何飲む?」

「あ、飲んでいいんだ?」

「ん、もうどうでもいい!」

 瓶に少し残っていたビールを勢いよく飲みほす私を見て、何が楽しいのか、トラオがまた笑った。
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