空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
整った食卓を囲み、向かい合って朝食を摂る。小さな口で少しずつ食べ進める仄香の様子に、思わず視線が吸い寄せられる。
狙ってしているわけではない。それなのに慎ましいその食べ方が、なんとも愛おしい。
「仄香。今日はフライトのあとに月例のミーティングがあるから、帰りは十九時くらいになりそうだ」
「そっか、わかった。今日もお仕事、頑張ってね」
「ありがとう。……いつも言ってるけど、何かあったらすぐ連絡して。いいな?」
「うん」
素直に頷く仄香を見て、わずかに胸が痛む。
外出もままならず、実質的に囲い込むような生活を強いているというのに、それでも彼女は、何ひとつ不満を口にしない。
(……早く、自由に過ごさせてやりたい)
そう思いながらも今後について話し合う余裕はなく、出なければならない時間が目の前に迫っていた。
片付けを引き受けてくれた仄香に後を任せ、財布とスマートフォン、鍵を手に取る。
「いってらっしゃい、拓ちゃん」
背中にかかる、控えめな声。それが日常になりつつある光景が、拓翔の心を優しく包み込んでいく。
ずっと夢見ていた、自分を待つ人がいる家。自分を送り出してくれる、愛しい女性。
拓翔は一度だけ仄香の肩を抱き寄せ、名残を惜しむように、彼女の白い額に唇を合わせた。
(……あと少しだ)
幼い頃に誓った夢のすべてを手にするまで、もうほんの少し。
オートロックの閉まる音を背に、駐車場へと向かう。さきほどまでのぬくもりを胸に抱いたまま、拓翔は仕事場へと車を走らせた。