空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「………理由を伺っても?」
「俺も詳しくは聞いていない。ただ、とあるクルーから君に関する『深刻な相談』があったそうだ。……とにかく、上が待っている。すぐに行ってくれ」
その響きに、拓翔の脳裏には即座に一人の女の顔が浮かんだ。
拓翔は短く了承の意を返すと、迷いのない足取りでエレベーターへ向かう。
(間違いなく、里穂の仕業だろうな)
そんな考えを浮かべながら到着した階で降り、静まり返った廊下を進む。目的の扉の前で一度だけ呼吸を整え、ノックをしてから入室した。
室内には、労務担当部長が重苦しい沈黙の中で書類を指先で叩きながら待ち構えていた。
「運航本部の加賀美副操縦士だね。そこに座りなさい」
「失礼します」
静かに椅子へ腰を下ろした直後、間を置かずに切り出される。
「さっそくだが、加賀美くん。君自身、ここに呼び出されたことに何か心当たりはないか」
誘導尋問にも近いその問いに対し、拓翔は微塵も動揺を見せずに答えた。
「いいえ。心当たりはありません」
「……君が極めて優秀な人材であることは、会社も十分に認めている。……だが、今回の件は見過ごせない」
机上の書類を指先で軽く叩きながら、部長は淡々と告げる。
「君と同じ運航本部のクルーから、君によるハラスメントの訴えが出ている。私生活のもつれを職場に持ち込み業務に支障をきたすのは、プロとして問題がある行為だと思わないかね」