空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
だが拓翔は一切揺らぐことなく、落ち着いたまま口を開いた。
「失礼ながら部長。その“対応”というのは、事実確認をせずに私に責任を認めさせる、という意味でしょうか」
穏やかな口調のまま、言葉はまっすぐ告げた。
「まず前提として申し上げますが、私と彼女の間に婚約関係は一切ありません。特別な関係だった事実もなく、主張されている内容の前提自体が成立していません」
淀みのない否定に、部長の手がわずかに止まる。
「もしハラスメントだとおっしゃるのであれば、いつどこで何があったのか、具体的な事実と、それを裏付ける証拠を提示してください。会社の規定に従うのであれば、根拠のない訴えだけで個人に不利益な処分を検討するのは問題になるはずです」
そして最後に、静かに一線を引く。
「……徹底的に調査していただいて構いません。その代わり、もしこれが虚偽の申告だったと判断された場合は、相応の対応が取られる……そう理解して、よろしいでしょうか」
淡々と告げられた言葉は、静かな圧力を伴って室内に落ちた。
部長はしばし沈黙し、眼鏡の奥で拓翔を見据える。やがて、ゆっくりと息を吐いた。
「……いいだろう。事実関係は改めて精査する。だが、それまでは軽率な行動は控えなさい」
「承知しました」
それ以上のやり取りはなく、拓翔は一礼して立ち上がって部屋を後にした。