空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
指先で自分の胸元をなぞりながら、里穂は愉しげに続ける。
「あんな女を選んだ罰よ。今さら謝ってももう遅いから。……このまま無事でいられるなんて、思わないほうがいいわよ」
見上げてくるその顔を、拓翔は一歩も動かず見下ろしていた。だがその瞳には怒りすらなく、純粋な蔑みだけが宿っている。
「……くだらないな」
深く息を吐くように落とされた一言に、里穂の笑みがわずかに引きつる。
「は……?」
「やり方があまりにお粗末だと言っているんだ。脅せば俺が屈するとでも思ったか? 言っておくが、お前の稚拙な嘘が通るほど、社会は甘くない」
「なっ……!」
「その薄っぺらい外面がどこまで通用するか見ものだな。せいぜい今のうちに楽しんでおけよ」
怒りを滲ませ言い返そうとする里穂の言葉を遮るように、拓翔の温度を失った声が重なる。
「仄香を迎えに行ったあの日、俺はお前に忠告したはずだ。二度は言わない」
言葉の裏で、頭にあの日の憔悴しきった仄香の姿が浮かぶ。
今でこそ隣でよく笑うようになってくれたが、それでもふとした瞬間に、酷い環境に縛り付けられていた頃の名残が浮かび上がる。
少しでも拓翔の役に立とうとそわそわと落ち着かない様子を見せたり、大したことなんてしていないのに大げさに喜んで、ぽろぽろと涙を流したりする。