空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 そんな彼女を見るたび、拓翔の胸は張り裂けそうになる。里穂が彼女からどれほどの尊厳と時間を奪い、その心を削り続けてきたか。

 それまで冷徹に保たれていた理性が、仄香を思うだけで、途端に激しい怒りが腹の底から激しくせり上がってくる。


 ──『外面だけは立派なお前が、実の妹を下僕のように扱い、搾取し続けてきた。それが周囲に知られたら、一体どちらの立場が危うくなるんだろうな?』──


 あの日突きつけた言葉をなぞるように、拓翔は里穂を鋭い視線で射抜いた。

「俺の大事な女を悲しませた報いは必ず受けさせる。今後の身の振り方を、よく考えておくことだな」

 それだけを冷徹に吐き捨てると、拓翔は一度も振り返ることなくその場を立ち去った。

「な、なによ……!」

 背後で里穂の苛立ち混じりの叫びが聞こえたが、もはや耳に留める価値もなかった。

 エレベーターホールへ向かう拓翔の胸中には、守ると決めた、あの柔らかな笑顔だけがある。

 拓翔は迷いのない足取りで、廊下の先へと姿を消した。

< 108 / 160 >

この作品をシェア

pagetop