空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
甘い残熱
拓翔を見送ったあと、仄香は肩を落としてリビングへ戻った。
つい先ほどまで人の気配で満ちていた空間は静まり返っていて、ほんの少しだけ物寂しい。それでもどこかに残っているような彼の気配と、触れられたぬくもりを思い出してしまい、頬にほんのりと熱が集まった。
(拓ちゃん……かっこよかったな……)
昨夜の記憶が、ふと浮かぶ。
耳元に落とされた熱い吐息。慈しむようでいて、どこか強引に肌をなぞった大きな手のひら。その感触を思い出すたびに胸がきゅっと高鳴り、思わず視線を落とす。
落ち着かない気持ちを誤魔化すように息を吐き、テーブルに残された彼のマグカップを手に取った。
そのままキッチンへ向かい、蛇口をひねる。水音の中でスポンジを滑らせながら、肌に優しい洗剤で丁寧に汚れを落としていく。
拓翔は過保護なまでに気を遣ってくれるけれど、仄香にとって彼のために何かをすることは、むしろ幸せなことだった。
気付けば自然と、彼のことばかり考えている。
(……拓ちゃん、今日は何が食べたいかな)
帰宅は十九時と言っていたから、それに合わせて夕食を用意したい。頭の中で時間を逆算しながら、これからの段取りを組み立てていく。
掃除をして、洗濯を回して、乾いたらアイロンをかけて、その合間にネットスーパーで買い物を済ませる。やることはいくつもあるけれど、不思議と気持ちは軽かった。
洗い物を終えると、水気を拭き取ってからスマートフォンを手に取る。