空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
今使っているのは、拓翔が新しく契約してくれたものだ。以前の端末は着の身着のままで連れ出してもらったあの日、実家に置いたままになっている。
ふとそのとき、一緒に置いてきてしまった花の栞のことを思い出した。
幼い頃から心の拠りどころにしてきた、大切な指輪の栞。何も持てなかった仄香にとって、たったひとつの宝物。
(……けど、もう捨てられちゃったかな……)
二人の凄まじい怒りようを思い出す。残してきたわずかな私物など、とうに処分されてしまったに違いない。そう思うと、じわりと痛みが胸に広がった。
沈みかけた気持ちを振り払うように、ネットスーパーのサイトを開こうとした──その時だった。
手にしたスマートフォンが、空気を震わせるように鳴動した。
表示された番号を見て、仄香は目を瞬かせる。現在休暇中の勤め先である、旅行代理店からの着信だった。
かすかな胸騒ぎを覚えながら、ゆっくりと端末を耳に当てる。
「……はい、桐生です」
『桐生さん?ああ、よかった、繋がって。休暇中にごめんなさい』
「いえ……何かありましたでしょうか」
『それが……実は今、大変なことになっていて』
電話の主は直属の先輩だった。その声には、はっきりと困惑と疲労が滲んでいる。
しかし続く言葉を聞いた瞬間、仄香の体から血の気が一気に引いた。
『お母様が……お店に乗り込んで来たの』