空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
頭の中が真っ白になる。ぐらりと視界が揺れ、喉がひどく乾いた。
「え……」
『お客様もいらっしゃる中で、ものすごい剣幕で……。話を聞こうとしても「娘を出せ」の一点張りで、まったく取り合っていただけなくて』
「………」
受話器越しの言葉が、現実味を持たないまま頭の中を滑っていく。
(お母さんが、職場に……?)
当たってほしくなかった拓翔の予感が、最悪な形で的中してしまった。
心臓が激しく打ち、スマートフォンを握る指先ががたがたと震え出す。どうすればいいのか、何から考えればいいのかも分からないまま、思考がまとまらない。
『警備員を呼んで、今はもう連れ出されたけれど……支店長がかなりお怒りで。一度、お店に来てお話できるかしら』
それからは謝罪の言葉どころか、上司からの呼び出しに、まともに返事ができていたかも曖昧だった。
気づけば通話は終わっていて、仄香はその場に立ち尽くしていた。だがすぐに押し寄せる恐怖に背中を押されるように、慌ただしく身支度を整える。
拓翔に言われていたことも、今はすっかり頭から抜け落ちていた。ただ一刻も早く行かなければという焦りに突き動かされるまま、部屋を飛び出す。
マンションに直結している駅へ駆け込み、そのまま電車へと飛び乗った。
揺れる車内で、握りしめたままのスマートフォンだけが、冷たく手のひらに張りついていた。