空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
十数分後、職場の自動ドアをくぐった瞬間、かつての同僚たちの視線が一斉に突き刺さった。
そこにあるのは同情や好奇心、そしてどこか警戒を含んだ、よそよそしい空気だった。
「……大人しい子だと思ってたのに。お母さん、あんな人だったのね」
「お姉さんの彼氏を寝取ったって、本当かしら」
抑えきれなかった小さな囁きが、耳に痛いほど届いた。
いたたまれなさに顔を伏せていると、すぐに奥の会議室から出てきた支店長に促され、仄香は逃げるように室内へ滑り込んだ。
「……この度は、多大なご迷惑をおかけして……本当に、申し訳ございませんでした」
着席するなり、仄香は椅子から崩れ落ちそうなほど深く頭を下げる。膝の上で握りしめた拳が、自分でも抑えられないほどに震えていた。
向かい側に座る支店長は、重く息を吐き出す。
「君の家庭事情を詮索するつもりはなかったが……今日のような騒ぎは、営業店としては致命的だ。警察を呼ぶ寸前だったよ。お母様は、君を連れて帰るまでここを動かないと叫び続けていたんだ」
「……っ、すみませ……」
「……君の行動が原因で家庭が壊れたと彼女は断言していたが、事実なのかい?」
言葉を選んでオブラートに包まれてはいたが、外で耳にした囁きからすれば、母がどんなふうに叫んでいたのかは想像がついた。
否定の言葉は浮かぶ。けれど、それを口にしたところで何も変わらないことも、分かっていた。