空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 恐怖と罪悪感が入り混じり、思考がうまくまとまらないまま、ただ涙を堪えることしかできなかった。

「桐生さん。君がこれまで真面目に働いてきたことは、こちらも十分理解している。今回の件も、君自身に責任があるとは考えていない」

 一度区切るように言葉を置き、支店長は視線をまっすぐ向けてきた。

「だが、このような状況が続けば、他のスタッフが安心して業務に集中できなくなる。それは結果として、店舗全体の問題になる」

「……はい……」

 その指摘は、あまりにも正しかった。「家庭の問題」という言葉で片付けるには、母の行動はあまりにも周囲に迷惑をかけすぎた。

「引っ越しに伴う休暇を取っていると聞いているが……ご家族との関係は、今後改善できそうなのか?」

 静かに問われたその言葉に、仄香の肩が小さく揺れた。

 関係の改善。それは再び母たちの言いなりになり、あの場所へ戻ることを意味する。拓翔が差し伸べてくれた手を離し、あの頃と同じ日々に戻るなど、今の自分には考えられなかった。

「……無理だと思います。母は、私の話を聞いてくれる人ではないので……」

 視線を落としたまま、震える声で言葉を継ぐ。

「……退職を、考えています。本当は、きちんとご相談したうえで決めるつもりでした。ですがこれ以上、ご迷惑をおかけするわけにはいきませんので……」

 言い終えたあと、部屋の中に重い沈黙が落ちた。支店長はすぐには答えず、しばらく仄香を見つめていた。


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