空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
彼が積み上げてきたものを、自分が壊してしまうかもしれない。
自分と関わったせいで、彼の未来に傷がつくかもしれない。
(私なんかが、そばにいるから……)
手から力が抜け、スマートフォンが床に落ちた。そのまま崩れるようにしゃがみ込み、両手で顔を覆う。
「っ、……ごめん、なさ……っ」
かすれた声が、音のない部屋に落ちた。
彼が帰ってきたとき、どんな顔をすればいいんだろう。そもそも、このままここにいていいのだろうか。
頭の中で、かつて母から浴びせられた言葉が蘇る。
──『あんたは、誰かを不幸にすることしかできないんだから』
価値がない、役に立たない、いなければいい──
(……私なんて、いなければ)
その考えが形を結びかけた、次の瞬間。
ガチャリ、と玄関の鍵が開く音が、重たく沈んだ空気を破った。
玄関のセンサーライトが反応し、廊下の明かりがリビングの端まで細長く伸びる。その光が近づいてくるだけで、飲み込まれかけていた感情が一気に現実へと引き戻された。
心臓が大きく跳ね、仄香ははっとして乱暴に涙を拭う。
「……仄香?」
落ち着いた声が優しく耳を撫で、安堵がこみ上げる。けれど同時に、強い罪悪感が胸をきりりと締めつけた。