空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「おかえりなさい」とうまく笑おうとした。けれど、引きつった頬は不自然に歪んだままだった。
「仄香、どうした」
その様子を見た途端、異変を察した拓翔が足早に歩み寄ってくる。
ラグの上に膝をつき、大きな手が仄香の肩を包み込む。コートに残る外気のひんやりとした気配と裏腹に、触れた手からははっきりとした熱が伝わってくる。
その温もりに触れた瞬間、どうにか押しとどめていたものが限界を迎えた。
「…っ、拓ちゃ……」
名前を呼んだだけで唇が震え、視界が滲む。
「……ああ。ゆっくりでいい。ここにいるから」
拓翔は壊れ物を扱うような手つきで、背中をさすり続けてくれた。その温もりに縋るようにして、仄香は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「今日……職場から、連絡があって……お母さんが、来たって……」
「……会ったのか?」
低く抑えられた声に、仄香は小さく首を振る。
「会ってない。……でも、もう、迷惑かけられないから……仕事、辞めることにして」
そこまで言ってから、震える手でスマートフォンを指差す。
「それから、姉さんのSNSも見た。私のせいで、拓ちゃんのひどいことたくさん書かれてて……大切な夢を、私のせいで壊しちゃう……私は結局、どこにいても……誰かの迷惑にしかならなくて……!」