空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
朝の重苦しかった気持ちが嘘のように、彼に翻弄され続けている。
――けれど。
ふと視線を上げたとき、スカーフの結び目を整える拓翔の表情が、いつになく険しく引き締まっていることに気づいた。
「拓ちゃん……?どうしたの…?」
見上げながら問いかけると、彼は一瞬だけ言葉を選ぶように間を置いた。
「……本当は、今日は一緒にいてやりたかったんだけど」
低く落とされた声に、胸がきゅっと締めつけられる。
「コンプライアンスの件で、こっちも聞き取りに出ろって言われてる。こんな時に一人にさせて、本当にごめんな」
「そんな……」
自分の立場も危ういかもしれない状況だというのに、彼はどこまでも、仄香のことだけを痛いほどに案じていた。
拓翔は僅かに腰を落として仄香の目線に合わせ、まっすぐにみつめながら両肩を掴む。
「仄香。職場で誰が何を言おうと、君が心を痛める必要は少しもない」
拓翔は仄香の両肩をしっかりと掴み、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「……それから、これは万が一のためのお守りで持っておいてくれ」
拓翔はそう言うと、背広の内ポケットから一枚の名刺を取り出した。
「これって……」
そこに記されていたのは、大手法律事務所に在籍する弁護士の名前だった。