空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
時折鳴る電話に対応しながら、担当変更の連絡メールを送り、必要な情報を抜け漏れのないよう書き添えていく。同時に、後任者が困らないようにと業務マニュアルの細かな修正や補足も進めた。
昼休みの時間になっても席を立つことはなく、簡単な栄養食を片手にそのまま作業を続ける。
そうして昼を過ぎた数時間後、一通りの作業に目処がついたところで、人事労務課の担当者に呼び出された。
静かな応接室でテーブルを挟み、退職願の受理や社会保険、年金の手続き、そして残っている有給休暇の消化方法など、事務的な説明が続く。
一通りの話を終えたたあと、担当者は少しだけ表情を緩めた。
「……できれば、こういう形でなく送り出したかったというのが本音です。桐生さんには長く勤めていただいていましたし……とても残念です」
人事担当者の言葉に、仄香の胸の中がチクリと痛んだ。
「ありがとうございます。……私自身も、未練がないわけではありません。十年近くお世話になりましたから」
視線を落としながら、それでもはっきりと言葉を続ける。
「ですが、これ以上みなさんにご迷惑をおかけするわけにはいかないので、今回の決断に至りました。本当に、申し訳ありません」