空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

「仄香!やっぱりここにいたのね!」

 警備員に「離しなさいよ!」と周囲に怒鳴りつけながら、身を乗り出してくる。

「あんたって子は! あんな男について勝手に家を出て、どれだけ薄情者なの! 連絡手段まで断って……これまで育ててやった親への感謝もないわけ!?」

「……っ」

 矢継ぎ早に浴びせられる暴言に、思わず身体が強張る。その剣幕に気圧されながらも、仄香は必死に言葉を繋いだ。

「どうして……?」

 震えを押し殺しながら、まっすぐに母を見つめる。

「どうして、そんなに私にこだわるの……? お母さんには、姉さんがいるじゃない。……お父さん似の、愚図でどんくさい娘は要らないって……いつも言ってたのに。どうして、こんな騒ぎまで起こして、私を連れ戻そうとするの……?」

 プライドの高い母が、人前でこれほどの醜態をさらしてまでして自分を追ってくるとは思っていなかった。

 けれど改めて見れば、その姿はかつてのような整ったものではなかった。シャツには目立つ皺が寄り、化粧は浮き、手入れの行き届いていたはずの髪も艶を失っている。

 仄香の問いかけに、怒りに燃えていた母の目からふっと色が抜けた。

「里穂は……あの子はだめよ」

 低く落ちたその声は、かつて姉に向けていたものとはまるで違っていた。

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