空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
母は栞の両端をつまみ、じわじわと力を込める。薄いラミネートがきしみ、中に閉じ込められた押し花が今にも砕けそうに歪んでいた。
「……っ、やめて、お母さん!」
「うるさい!やめてほしかったら、言うことを聞きなさい!」
言葉を失い、強い迷いに立ち尽くした。
戻りたくない。絶対に戻らない。けれど、あれを壊されるのも耐えられない。心の中で、相反する感情がぶつかり合う。
そんな仄香の動揺を見透かすように、母はにやりと口角を上げた。
「……それにしても、あんた、ずいぶんといい格好をするようになったじゃない。そのワンピース、雑誌で見たことがあるわ。首のスカーフも、ブランドものでしょう?」
「………」
「よほど、彼にいい思いをさせてもらっているようね」
母の粘つくような視線が、仄香の全身と、首元のスカーフを舐めるようにねめつける。そして突然、「そうだわ!」と、名案でも思いついたかのようにぱんと手を叩いた。
「いいことを思いついたわ。これからは私とあなたたち、三人で一緒に暮らしましょう!それだけ甘やかされているんだもの、あんたからお願いすれば、彼だって断れないでしょ?」
さも素晴らしい提案だと言わんばかりの物言いに、仄香は耳を疑った。信じられないという絶望感とともに、腹の底からじわじわと、見たこともないような熱い怒りがせり上がってくる。