空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
孤独な地獄から救い出し、この世でただ一人、自分を愛してくれたひと。その人生も想いも、何もかもを、母は踏みにじろうとしている。
それだけでは足りず、彼の優しさも、懸命に築き上げてきた穏やかな日々までも引きずり落とそうとしてくる。
その瞬間、仄香の中で、ぷつりと何かが音を立てて切れた。
「……お母さん」
それまで体を縛りつけていた恐怖が、すべて塗り替えられていく。膝の震えは止まり、代わりに、これまで知らなかったほどの怒りが身体を満たしていた。
「馬鹿なこと言ってないで、今すぐそれを返して」
初めて見る娘の表情に、勝ち誇っていた母の顔がわずかに強張る。
「な、何よ。親に向かってそんな言い方……」
「返して」
声は落ち着いているのに、冷たく突き放すような強さがあった。
母の手がびくりと跳ねたその一瞬の隙を逃さず、仄香は踏み込み、指先から栞を奪い返した。
ラミネートの感触を確かめるように強く握りしめ、まっすぐに見据える。
「……お母さん、私はもう、あなたの言いなりにはならないよ」
震えそうになる声を押さえ込みながら、一言ずつ言葉を紡ぐ。